墨出し工事


突然ですが、みなさんは「墨出し」という言葉を聞いたことがありますか?「墨出し」とは、建築や土木工事を行う際、施工図の情報を正確に現場に記す作業のことをいいます。その名の通り、墨を使用して線や寸法を書き出すことからその名が付けられました。「図面の情報を書き出す」というと「建物を建てる前に、設計図を原寸大で現場に写し出す」というイメージを思い浮かべるかもしれませんが、実際には敷地の測量から基礎工事、躯体工事、仕上げ工事、そして配管や電気工事に至るまで、工事の着工から竣工までのあらゆる工程において、墨出しは行われています。では、このような墨出し作業は、具体的にどのように実施され、工事にどのような影響を及ぼすのでしょうか?今回はそんな墨出し工事に関して詳しく解説いたします。

墨出しの必要性

建設工事は、特定の材料を施工図どおりの位置に運び、設置するという一連の作業の繰り返しです。しかし、ひとつの作業を行う度に測量し、施工図から正確な位置情報を抽出していたのでは、工事の進捗に影響が出るばかりでなく、多くのスタッフが参加する工事現場において混乱を招きかねません。誰もがスムーズに作業を進めるためには、明確な基準をあらかじめ示しておくことが必要です。ここで重要となるのが「墨出し」です。正確な測量に基づいて、基準となる場所からどれくらいの距離で、高さで、角度なのかを、線を引いたり寸法を表示したりして示すことにより、図面どおりに施工が進むのです。墨出しは、すべての工事の指針となるものなので、誤って書かれてしまうと修正作業が増えて、工事の品質に影響を及ぼします。墨出しの精度が、工事の進行や完成度に直結するといっても過言ではありません。また、墨出しは工事の効率性にも深く関わります。墨出しが正確に施されていることにより、あらゆるスタッフがどのように作業を進行するべきかを容易に理解することができ、作業の流れがその分スムーズになります。修正作業も少なくて済むので、工期の短縮にも寄与します。つまり墨出しは、品質保持と効率向上の両面で、工事を支える重要なプロセスといえます。

墨出しはあらゆる工事において最初に行われる作業

一般的な建築工事は、まずは敷地測量から始まって建物の土台をつくる基礎工事、柱・壁・床を組み立てる躯体工事、見た目や生活設備を整備する仕上げ工事を経て、ようやく完成します。各段階はさらに細分化されており、墨出しはこれらほぼ全ての工程で最初に行われます。たとえば、敷地測量では、隣の敷地との境界を明確にし、柱や壁などの中心線や水平線を指定するため、特定の位置に木杭を打って、墨で印を付けます。基礎工事では、鉄筋やコンクリートを打ち込むための型枠を設定する基準線を示し、躯体工事では各階ごとに基準となる墨を下階から移して、高さの基準も明確にします。そして仕上げ工事で、窓やドアの位置、内装や外壁の配置を示す墨出しを行います。このように、各工程を開始する時に墨出しを行うことによって、工事に関わる全てのスタッフが施工図の情報を正確に具現化することができるのです。

墨出しは、建設工事の基本

墨出しとは、工事現場に図面の情報を写す作業のことを言います。実際に墨を用いて行われることが多いことから、このように呼ばれています。大まかには「基点の印打ち→親墨(芯墨や陸墨)→親墨を上階に移動→子墨出し」という手順で進められますが、具体的には行政が定める共通仕様書や、特記仕様書が基準となっています。この墨出し工事には、専門用語や専門道具が用いられることも多いため、実際の作業ではまずは用語の意味や道具の使い方を押さえておくことが重要といえます。
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