建設業界は、比較的安定している業界ではあるものの、その安定が崩れかねない課題も多くある状況です。これから紹介する課題は、国も率先して解決に取り組んでいて、建設業界で働く人は知っておかなければならない内容ばかりです。そこで今回は、建設業界で働くなら知っておきたい課題を4つ解説いたします。就活では、業界の課題に関しての知識を問われる可能性もありますので、理解を深めておきましょう。
建設業界で働くなら知っておきたい課題
①人手不足の深刻化
少子高齢化によって、あらゆる業界で労働者は不足している状況ですが、建設業界は特に人手不足が深刻です。国土交通省による、建設産業の現状と課題を見てみると、建設業界の労働者の数は1997年から年々減少しており、ピーク時には685万人いた業界の労働者人口も、2012年には498万人にまで減少してしまいました。これだけ業界の労働者が減少したにもかかわらず、インフラの建物の修繕工事や整備といった仕事は今後ますます増加するといわれています。建設業界の労働者がいなくなってしまっては、工事を円滑に進めるのも難しくなってしまいます。
②若手人材の育成の遅れ
建設業界は、特に若手が少ない業界だといわれています。国交省による、建設業および建設工事従事者の現状を見てみると、建設業界で働く労働者の30%以上が55歳以上となっており、さらに29歳以下の労働者は、全体の約11%しかいません。このような高齢化が進むなかで、技術力の高いベテランが、絶え間なく仕事を請けているのが現状です。そのため、ただでさえ少ない若手人材の育成に、十分な時間が確保できていないというのが現状です。職人のような、現場に精通した技術を身に付けるには、早くとも5〜10年の修行期間が必要だともいわれています。
③残業や休日出勤などの長時間労働の常態化
建設業界は、他業界と比べても特に時間外労働の多い業界です。国交省による建設業における働き方改革のデータによると、建設業界の年間労働時間は平均して2,000時間を超えており、他産業よりも200時間ほど労働時間が多いとされています。建設業界と似た業界といわれている製造業界と比べても70時間ほど多く、業界の体質として、残業が多い傾向にあります。また4週間当たりの休暇日数も4.6日しかなく、平均して休みは週に1日のみとなっています。ここまで休みの少ない理由は、古くからの業界の体質が変わっていないことが原因です。社員ひとりひとりの仕事量が多く、残業しても良いという風習が残っている傾向にあるとみられます。
④DX化の遅れ
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、進化したIT技術を浸透させ、人々の生活をより良いものへと変革することを指します。建設業界では、多くの作業がデジタル化されていない現状があります。建設業は、現場でものを造り上げる仕事であるため、現場へ直接出向いて進捗の確認をしたり、図面を突き合わせて打ち合わせをしたりするというのが一般的な仕事の進め方でした。しかし新型コロナウイルス感染症の影響によって、建設業界の働き方にも見直しの動きが高まりました。在宅ワークやWeb会議といった、これまでにはない働き方を余儀なくされたのです。しかし、各企業で十分な設備が整っていないこともあり、DX化が十分に進んでいないのが現状です。
しかし!!働き方が劇的に変わるかも!
ここまで説明したように、建設業界は多くの課題を抱えている業界です。これらの課題を解決していかなければ、今後の建設業界が衰退していくのは避けられない事態にもなりかねません。しかし建設業界では、これらの課題を深刻に受け止め、課題解決に向けて国が率先して働き方を変えようと、現在動いているところです。そこで、建設業界の働き方を変えるためのトレンドを4つ解説いたします!
①働き方改革への取り組み
まずは働きやすい環境を作らなければ、建設業界で働きたいと思う人を増やすことはできません。そこで建設業界では、国を挙げて働き方改革に取り組んでいます。具体的には、以下のような施策を進めています。
●働き方改革の取り組み内容
・建設現場の週休二日制の導入
・残業時間の抑制
・教育環境や研修制度の拡充
・女性職員を増やす取り組み
そもそもが無理な工期設定が、残業や休日出勤につながっていることから、工事を発注する公的機関と受注者との間で、適切な工期を設定できるように努めています。また建設業界は従来、3K(きつい、危険、汚い)と言われることもありましたが、現在は国土交通省が主体となり、新3K(給与、休暇、希望)を打ち出して、業界全体の働き方を変えようと動いています。
②技術者の処遇改善
建設業界では、技能労働者の処遇を改善する動きが進んでいます。具体的には「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を2019年4月から運用を開始しており、このCCUSは国土交通省と建設業団体が、官民一体で推進してきたシステムです。このシステムでは、建設業にかかわる人の資格や社会保険加入の有無、現場での就業時間などをデータで登録することができます。これによって、技能者のスキルが客観的に見えるようになり、どんなスキルを持った技術者がいるのか、簡単に把握できるようになりました。また、労働時間の確認や技術力も客観的に見られるため、技術者に対する評価を適性に実施できるのでは、と期待されています。適正な評価を受ける技術者が増えれば、今まで仕事を安く受けていた技術者の待遇が改善され、業界全体の処遇改善にもつながります。
③DX化推進による業務効率化
建設業界では、DX化にも力を入れて取り組んでいます。建設業界でDXを進める背景には、人手不足の解消や業務の効率化が挙げられます。少子高齢化が進んでいるため、人員を割かずとも今までと同じ仕事を進めていく必要があることに加えて、業務時間の短縮にもつながり、処遇改善の効果も期待されています。
●建設業界でDX化が進んでいる例
・BIM/CIM(3次元モデルを利用した情報共有)
・AI(人工知能)によるデータ処理
・ICT(情報通信技術)の導入
・IoTで建設機械とインターネットを接続
たとえば、先ほど説明した「建設キャリアアップシステム(CCUS)」もDX化の一環で実施されています。
④外国人労働者の受け入れ
労働者不足の対策として、必要な人材を確保するため、外国人労働者を積極的に採用する企業が増えてきました。建設業界では、まだまだ人の手で作業しなければならない業務も多いことなどから、外国人労働者を雇うメリットが大きいのです。また外国人労働者側としても、建設業界に従事しながら、日本で建設技術を身に付けられるというメリットもあります。このように外国人労働者の採用は、双方にメリットがある人手不足の対策として、活用が進められています。
建設業界は、規模の大きな仕事ができるので、とてもやりがいが感じられる業界です。一方で、成熟した業界でもあることから、多くの課題解決に向けて動いている業界でもあります。変化の激しい業界だからこそ、建設業界を目指している方は、こういったトレンドを理解しておくことは必須だといえるでしょう。
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